糖質制限ダイエットが流行しています。糖質制限ダイエットは簡単に、しかも健康に痩せることができるとされているからです。でも、糖質制限ダイエットにも問題点はあります。
糖質制限ダイエットは間違った方法で行うと危険なこともあるのです。特に糖尿病の人は、命にかかわることもあるので、注意が必要です。
糖質制限ダイエットの危険性や問題点、正しいやり方、糖尿病患者さんが行う時の注意点をまとめました。
この記事の目次
糖質制限ダイエットとは?
糖質制限ダイエットとは、糖質の摂取を制限するダイエットのことです。糖質とは、炭水化物から食物繊維を抜いたものですね。
・炭水化物=糖質+食物繊維
つまり、炭水化物を制限すれば、糖質制限ダイエットになるということです。ご飯やパン、麺類、砂糖類などを摂らないようにします。
糖質制限ダイエットの最初の提唱者であるアメリカの医師のロバート・アトキンスは、通常1日に200~300g摂る糖質を、20~40gに制限すれば、あとは何を食べても良いと説明しています。
この「糖質さえ制限すれば、あとは制限する必要がない」という手軽さが人気を呼んで、日本でも糖質制限ダイエットを行う人が増えました。
糖質制限ダイエットが痩せる理由
糖質制限ダイエットが、なぜ健康的に痩せられるかというと、血糖値が関係しているからです。糖質を制限すれば、血糖値は上がりにくくなります。
通常、糖質を食べると血糖値が急上昇して、血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。インスリンは、血液中の糖と結合して、脂肪細胞に中性脂肪として取り込まれるのです。
つまり、血糖値が上がると、中性脂肪が溜まりやすくなるんですね。糖質制限ダイエットは、血糖値が上がりにくいので、脂肪が溜まりにくくなるというメリットがあります。また、糖質を制限すれば、カロリーオフにもなります。
また、糖質はエネルギー源になりますが、その糖質を制限することで、もう1つのエネルギー源である脂肪が燃焼しやすくなります。
そして、インスリンの分泌量が減りますので、インスリンを分泌する膵臓が疲弊しないというメリットもあり、糖尿病になりにくいのです。
糖質制限ダイエットの危険性や問題点
糖質制限ダイエットはダイエットできて、糖尿病も予防できるというメリットがありますが、残念ながらメリットだけではありません。糖質制限ダイエットには危険性や問題点もあるのです。
筋肉量が低下する
糖質制限ダイエットの問題点の1つ目は、筋肉量が低下することです。糖質を制限すると、どうしても体はエネルギー不足になります。
そうすると、脂肪が燃焼しやすくなるというメリットはあるものの、同時に筋肉も落ちていくんです。
筋肉にはアミノ酸が蓄えられています。エネルギー不足になると、筋肉を分解してアミノ酸を放出し、そのアミノ酸を肝臓で糖に作り変えて、エネルギーにするのです。
そのため、糖質制限ダイエットをしていると筋肉量がドンドン低下していってしまいます。
低血糖になる危険性
糖質ダイエットの問題点の2つ目は低血糖になる危険があることです。脂肪やたんぱく質も血糖値を上昇させる栄養素ですが、やはり糖質が一番血糖値を上げやすいのです。
血糖値は上がりすぎると健康に悪いですが、低くなりすぎても問題です。私たちの身体は、血糖値が下がり過ぎないようにコントロールされていますが、それでも糖質の摂取が少なすぎると、低血糖になる危険が出てくるのです。
食物繊維が不足しがち
糖質制限ダイエットをすると、食物繊維が不足する可能性があります。糖質制限ダイエットをするということは炭水化物を制限するということですね。
炭水化物は糖質+食物繊維ですから、炭水化物を抜けば食物繊維の摂取量も不足しがちになるんです。
食物繊維が不足すれば、便秘になり、腸内環境が悪化してして、健康に悪影響が出てきてしまいます。
ストレスで挫折する
糖質制限ダイエットをすると、糖質を食べられないストレスで、ダイエットを挫折する可能性があります。
甘いものを食べると、幸せな気分になりますよね。あれは、砂糖などの糖質を摂取することで、脳内でドーパミンなどの快楽を感じる物質が放出されるので、幸福感を味わえるんです。
糖質制限ダイエットは、甘いものを食べることができませんので、幸福感を安易に味わうことができず、イライラしてしまい、ストレスを感じてダイエットを挫折する可能性が高くなります。
肉や脂肪を摂りすぎる
糖質制限ダイエットは、糖質を制限すれば、あとは何を食べても良いというダイエット方法になりますので、肉類や脂肪が多い食べ物を食べ過ぎてしまう可能性があります。
「糖質を制限しているんだから、良いかな?」と感じて、肉をガンガン食べてしまうと、いつの間にかカロリーオーバーになっていることがあります。
しかも、動物性脂質を摂りすぎると、中性脂肪や悪玉コレステロールが増えて、動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳卒中の原因になってしまうんです。
糖質制限ダイエットの正しいやり方
糖質制限ダイエットをする時には、必ず正しいやり方で実践しなければいけません。糖質制限ダイエットをする時には、次の5つのことを守って行いましょう。
1.糖質は完全カットせずに、いつもの半分程度は食べる
2.カロリー計算をして食べ過ぎないようにする
3.栄養のバランスの取れた食事を摂る
4.野菜や海藻類から食物繊維をたっぷり摂る
5.筋トレをして筋肉量を落とさないようにする
これらの5つの項目を守って糖質制限ダイエットを行えば、安全にダイエットをすることができるはずです。
糖尿病の人の糖質制限は命にかかわることも!
糖質制限ダイエットは、メリットだけでなく問題点もあって、間違ったやり方で行うと危険なこともあります。ただ、健康な人は正しいやり方で行えば、安全にダイエットをすることができます。
問題は糖尿病の人です。糖質制限ダイエットは、糖質を制限しますので、血糖値が上がりにくくなり、膵臓を保護することができますので、糖尿病の人にとってはとても魅力的なダイエット法に見えると思います。
ただ、糖尿病の人が自己判断で糖質制限ダイエットをするのは、おすすめできません。なぜなら、低血糖になる可能性があるからです。
糖尿病の治療をしている人は、血糖を下げるための内服薬を服用したり、インスリンを注射している人がいると思います。そのような人が糖質制限ダイエットをすると、一気に血糖値が下がって低血糖を起こす可能性があります。
糖質制限食は開始直後から効果があるため、 経口血糖降下剤内服やインスリン注射をしている人は 低血糖発作を起こす可能性があります。
低血糖になると、意識障害が起こって、最悪の場合は命を落とす危険もあるのです。
また、糖質制限ダイエットをしていると、カロリーや栄養を補うために、高タンパクの食事になります。でも、糖尿病の人は、高タンパクの食事はNGなんです。
糖尿病になると、腎機能が低下します。糖分の濃度が高いドロドロの血液をろ過しているために、腎臓に負担がかかっているからですね。
その状態で高タンパクの食事を摂ると、さらに腎臓に負担をかけることになりますので、腎不全を招く可能性すらあるのです。
そして、日本糖尿病学会は、極端な糖質制限を薦めてはいません。
総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に 制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守 性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では 薦められない。
引用:日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言 ~糖尿病における食事療法の現状と課題~:日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Society
そのため、糖尿病患者が安易に糖質制限ダイエットをするのは、危険なこともあるのです。
糖尿病の人は医師の指示に従って糖質制限を!
それでも、糖尿病の人にとって糖質制限ダイエットは、とても魅力的なダイエット方法に映りますし、実際に糖尿病の人が糖質制限ダイエットをすることで、糖尿病が改善したというケースも多々あります。
もし、糖尿病の人が糖質制限ダイエットにチャレンジするなら、必ず主治医に相談するようにしてください。
そして、どのくらい糖質を制限すべきなのか、医師の指示に従って、糖質制限ダイエットをするようにしましょう。そうすれば、糖尿病の人でも危険なく安全に糖質制限ダイエットをすることができて、糖尿病を改善できるはずです。
糖質制限ダイエットの危険性・問題点についてのまとめ
「筋肉量が低下する」「低血糖になる危険性」「食物繊維が不足しがち」「ストレスで挫折する」「肉や脂肪を摂りすぎる」
・糖質制限ダイエットの正しいやり方
「糖質は完全にカットせず半分程度を食べる」「カロリー計算をして食べすぎないようにする」「栄養バランスを意識する」「野菜や海藻類から食物繊維をたっぷり摂る」「筋トレをして筋肉量を落とさないようにする」
・糖尿病の人に糖質制限ダイエットはおすすめできない
糖質制限ダイエットの危険性や問題点、糖尿病の人が糖質制限を行う時の注意点をまとめました。糖質制限ダイエットはメリットだけではなく、健康に悪影響が及ぶこともありますので、正しいやり方で安全に行うようにしてください。
特に、糖尿病の人は「糖尿病が簡単に改善できる」と思って、安易に自己判断で糖質制限ダイエットを行いがちですが、糖尿病の人は必ず主治医に相談してから、糖質制限ダイエットを行うようにしましょう。